カエデの植生調査の過程で、広葉樹林に多くのキハダが育成していることが分かりました。日本薬科大学と共同研究により、森林資源の一つとして秩父地域のキハダの活用を推進するプロジェクトです。
1.キハダとは
キハダ (黄檗、黄膚、黄柏)
学名: Phellodendron amurense
ミカン科キハダ属
落葉性の高木で、幹の直径が1メートルをこすものもあり、秩父の森に多く自生しています。ミカン科の特徴で葉はカラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハが好みます、果実は直径10mmほどでミカン科特有の強い芳香があります。
樹皮は淡黄灰色で、コルク層がよく発達し、内皮は鮮やかな黄色です。黄色い内皮をもつためキハダ(黄蘗)と呼ばれます。
キハダの内皮を乾燥したものをオウバクと言います。オウバク(黄檗・黄柏)はベルベリンなどのアルカロイドを含んでおり、強い抗菌性・抗生作用を有します。オウバクから作る「百草」は秩父大滝生まれの普寛上人が木曽の御嶽山を開山したとき村人へ製法を伝授したのが起源と言われています。
大変苦く、奈良の寺では長いお経である「陀羅尼助」を唱える時に口にくわえて眠気覚ましとしても用いられました。
黄蘗色(きはだいろ)ともよばれる鮮やかな黄色染料として、飛鳥時代から用いられ、中国で服色として地位の高い黄色にオウバクを用いられました、また和紙にオウバクの黄色をそめ、虫除けとしても用いられました。
2.キハダと普寛上人
江戸時代中期の享保16年(1731)に大滝落合に生まれ、秩父神蔭流を学び、成人し江戸へのぼると江戸の剣客5指にかぞえられました。 故郷三峰の髙雲寺別当日照法印のすすめで故郷へ戻り髙雲寺で得度し、名も本明院普寛と改めて笈を負って諸国修行に旅立ち、御嶽行法を完成させました。
木曽御嶽山の開闢を成し、「王滝口」は生地・大滝にちなみます。八海山や上州の武尊山など数多くの霊山を開き、
キハダから作られる霊薬「百草」製法を伝授、巡錫中貧しき人々を救いました。
3.キハダの成分
1) アルカロイド
医薬品として規定される成分 ベルベリン化合物、生薬へと加工された黄柏は日本薬局方(16局:医薬品)に収載
日本薬局方(第16改正)<医薬品としての規定>
本品はキハダPhellodendron amurense Ruprecht 又はPhellodendron chinense Schneider(Rutaceae)の周皮を除いた樹皮である.本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,ベルベリン〔ベルベリン塩化物(C20H18ClNO4:371.81)として〕1.2 % 以上を含む.
2) リモノイド
キハダの苦味はベルベリン以外にもカンキツ系成分独特の苦み成分リモノイドに由来する、リモノイドは本来、昆虫に対する摂食忌避作用がある、駆虫成分として、ミカン科系植物に多く含まれ、強い苦味・えぐみがある。同科天然キハダにも多く含まれ、最近の研究から、抗菌、抗細菌、抗腫瘍、抗マラリア作用など様々な生理活性を示す重要な成分であることが報告され、ベルベリンと並び機能性成分として注目されるようなった。
● 調査・採取・研究
    ●植生調査            ●調査               ●樹皮採取           ●日本薬科大学 野澤先生の解説    ●日本薬科大学 高野先生の分析結果発表
キハダの試験採取
2013/08/04
キハダとは
キハダの試験採取は、初めての取り組みです。日本薬科大学の漢方薬の先生の協力が得られることになったので、ようやく着手することにしました。カエデの調査で、杉の峠付近の広葉樹林に多くのキハダが育成しています。これを伐倒・玉切りして樹皮を採取します。胃腸薬などに用いられる黄檗(おうばく)は、キハダの黄色い内樹皮を原料としてします。ベルベリンという薬効成分が含まれ、お盆前後にもっとも薬効成分が多くなるといわれています。
森林資源の一つとして秩父地域のキハダの分布について注目してきましたが、1本のキハダからどのくらいの量がとれるのか、また有効成分はどのくらい含まれるのかを検証するために採取試験を行いました。
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